-看護師を目指した理由を教えてください。
高校時代に何気なく幼少期のアルバムを開くと、「将来は“かんごふ”になりたい」と書かれた紙を持つ自分の写真がありました。その発見がきっかけです。当時から女性が自立できる仕事に就きたい気持ちがあったため、過去の自分に導かれて看護の道に進むことを決めました。
子どもの頃の私は、近所で捨て犬を見かけると放っておけなくて「自宅に連れてきて面倒をみる」を繰り返していて、母親からは「面倒見が良いし、看護師に向いていると思うよ」と賛成してもらえました。
-新人時代の思い出を教えてください。
私の新人時代は「怒られてなんぼ」という厳しい時代でしたから、プリセプターのような指導者はおらず、「仕事は見て覚える」が基本でした。1年目は厳しい先輩に怒られてばかりで、看護師を辞めて故郷に戻りたい!と何度思ったことか…。でも、そんな時は大好きな母のことを思い出して、一人前になるまで故郷に戻らないぞ!と、自分を奮い立たせて乗り越えてきました。
当時の失敗談はたくさんあるけれど、失敗の数だけ人は成長するって本当です。命に関わることでなければ「失敗は次に繋がるもの」と前向きに捉えて、二度と同じ失敗を繰り返さないように心がければ良いと思っています。
-印象に残っている患者様とのエピソードはありますか?
初めて働いた職場は産科・婦人科・小児科などを標榜する「産院」で、身体のケアと同じくらい「心のケア」が求められる現場でした。夜勤の日には、消灯後に話がしたいという妊産婦さんや女性患者様が私のもとに来てくださって、いろいろな悩みに寄り添った思い出があります。
特に印象に残っているのは、子宮筋腫の手術を受ける女性患者様との思い出。その方にはお子さんがいて、「今まで病気とは無縁の人生を歩んできたのに、まさか自分が入院するなんて。子どものことが心配で仕方ない」と、精神的に不安定な状態が続いていました。
でも、当時の私は20代で、結婚も出産も経験していない私が、年上の患者様に助言するなんておこがましい…と思ってしまい、話を聴くことしかできなかったんですよね。力不足で申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、無事手術を終えて退院を迎えた日、その患者様から「あなたに話を聞いてもらえたことが励みになったわ。ありがとう」と、感謝の気持ちを伝えられました。
患者様が求めているのは、悩みや不安を打ち明けられる相手です。今も私は「この看護師なら安心して話ができる」と感じてもらえるような関わりを大事にしています。