看護師の残業(時間外労働)の実態、残業が多くなる原因とは

2023年12月23日

看護師 残業

看護師の残業(時間外労働)の実態、残業が多くなる原因とは

「看護師は残業が多い…」このような実感を持つ看護師の方は多いのではないでしょうか。
病院やクリニックなどで医師のサポートや患者のケアを行う看護師は、突発的な業務が発生しやすい仕事です。また、院内研修や看護記録、夜勤のある勤務形態なども看護師の特徴であり、残業が多くなる原因だと考えられます。

しかし、近年は働き方改革の推進により、多くの病院で残業時間を減らす取り組みが行われています。残業の原因となるものを取り除けば、看護師の残業時間を減らすことができるでしょう。
看護師の時間外労働の実態や残業が多くなる原因など、看護師の残業について解説します。

ページ目次

1.看護師の時間外労働の実態

2017年に日本医療労働組合連合会が看護師を対象に行った労働実態に関する調査があります。下表が看護師の時間外労働(日勤)の状態です。

この調査によると、日勤看護師の73.9%が終業時間後に30分以上の残業(下表の☆印)をしていることがわかりました。
また、始業時間前に30分以上の時間外労働(下表の★印)をしている看護師の割合は53.2%であり、こちらも半数を超えています。

――始業時間「前」終業時間「後」
①なし20.2%12.1%
②約15分26.7%14.0%
③約30分33.9% ★21.8% ☆
④約45分10.4% ★8.1% ☆
⑤約60分7.2% ★21.3% ☆
⑥約90分1.2% ★13.2% ☆
⑦約120分以上0.5% ★9.5% ☆

【出典】:2017年 看護職員の労働実態調査結果報告|日本医療労働組合連合会

同調査によると、1時間以上の時間外労働をしている看護師は、始業時間前・終業時間後ともに若い年代ほど多くなっています。特に日勤看護師は半数近くが終業時間後に1時間以上の長時間残業をしており、看護師の残業の多さが浮き彫りとなりました。

2.看護師の残業が多くなる原因とは

看護師の残業が発生する原因は、看護師の仕事の特性によるものが大きいと考えられます。たとえば、以下のような原因があげられます。
○2交替、3交替という不規則な勤務形態
○交替時の勤務の引き継ぎ
○看護記録の作成
○急患など突発時の対応
○研修・勉強会
○人員不足

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

看護師の勤務形態

看護師の勤務形態は職場によって異なりますが、大学病院や総合病院など入院施設のある病院では夜勤が発生するため、2交替制か3交替制になるのが基本です。
2交替制は、日中に勤務する日勤と、夕方から朝まで勤務しますが、夜勤の拘束時間が長いのが特徴です。
3交替制は、日勤と夜勤のほかに準夜勤のある勤務形態で、それぞれ8時間ずつ勤務します。

看護師の勤務形態では、日勤の場合は夜勤への引き継ぎ、夜勤の場合は日勤への引き継ぎがそれぞれ必要となるため、始業時間前や終業時間後の時間外労働がどうしても多くなってしまいます。

看護記録の作成

看護記録とは、看護師が実施した業務内容や過程などを記録するもので、裁判資料としても扱われる重要な書類です。看護実践の証明や持続性の担保、質の向上を図ることが目的とされています。

看護記録は適時記録することが基本であり、他の業務との兼ね合いですぐにとりかかれない場合も、できるだけ速やかに記録することが求められています。
しかし、勤務時間内に記録する時間はなかなかとれず、申し送りを終えたあとに看護記録の作業に入るのが実情です。電子カルテの導入で看護師の負担が減った部分もありますが、勤務時間内に終わらずに残業せざるを得ないケースが多々あるようです。

突発的な入院や急変の対応

病院で働く看護師は、突発的な入院や患者の急変が残業の原因になることもあります。
緊急時のサポート体制がしっかりととれている病院ならば、残業をせずに済む場合もありますが、ゆとりある人員体制をとれる病院は多くはなく、突発的な入院や急変の際には、残業とならざるを得ないケースがほとんどです。

慢性的な人員不足

日本医療労働組合連合会の調査によると、看護師の人員不足は深刻であり、多くの看護師が過重労働を実感しているとのこと。2017年の労働実態調査では、1年前と比べ仕事量が「大幅に増えた」「若干増えた」と回答した看護師の割合はおよそ6割と、半数を超えています。
調査によると、仕事量が増えた理由は、患者の高齢化や重症化、認知症の増加からくる人手不足が原因と訴える声が多く、特に40代以上のベテラン層が大幅な仕事量増加を感じているようです。

院内研修・勉強会への参加

院内研修や勉強会への参加も残業の原因として考えられます。
院内研修や勉強会は「業務」とみなされるものであり、できる限り勤務時間内で実施するのが基本です。しかし、日々の業務がある中で研修も行うのなかなか難しく、勤務時間外に実施している病院は多くあります。

3.看護師の残業を減らす対策とポイント

看護師 残業 減らす

近年は働き方改革の推進により、時間外労働を減らすことが課題としてあげられており、今まで看護師の残業が多かった病院でも、下記のような取り組みが行われています。

勤務形態の見直し

看護師の勤務形態は2交替制と3交替制が基本ですが、日勤勤務の看護師は残業が多くなる現状があります。よって、10時~19時などの新たな時間帯の日勤勤務を設定することで、通常の日勤勤務者の業務がカバーできます。

また、2人の看護師がペアを組み互いに協力して業務を行う「パートナーシップ・ナーシング・システム」を活用し、1時間程度の時差出勤をすることで残業時間の削減につなげられます。

出勤時間を固定したり、申し送りの時間を遅めにとったりするなどの工夫で、始業時間前の時間外労働をなくせます。

業務内容の改善

業務内容を見直し改善させることも、看護師の残業をなくす方法のひとつです。業務に無駄が発生していないか、協力体制をとって時間を短縮できる業務はないかなどの見直しを行うことで、業務時間が短縮でき、勤務時間内に業務を終えられるように改善できます。

また、院内研修や勉強会、会議などを日勤の時間帯に取り入れることで、残業時間を減らせます。

突発的な業務に対応できるシステムづくり

緊急入院や急変などの緊急時にも人員的にしっかりと対応できるよう、スタッフ同士で業務状況を確認し合い、人手が足りないところを補えるような、環境づくりをすることで、残業を減らせます。

4.看護師の残業が多い診療科目や部署は

特に残業が多い診療科目には、循環器科や産婦人科があげられます。循環器科では急変が起こりやすく、産婦人科では出産予定が計画的に進むとは限らないため、勤務時間内に業務を終えられない日も多くなります。

残業が多い部署には外来や手術室があげられます。大規模な病院は外来の患者様人数も多く、規定の診療時間をオーバーすることもたびたびあります。手術室の場合、難しい手術は長時間に及ぶこともあるため、残業が多くなりがちです。

残業が多い職場で働くメリット

残業が多い職場で働くメリットは、残業手当がつく分、毎月支給される給与が高くなることがあげられます。また、大規模な病院や緊急性のある科目が多いため、看護師としてのスキルアップもしやすい環境といえます。

5.看護師の残業が少ない職場とは

看護師 残業 職場

看護師の残業が少ない職場は、リハビリテーションや介護施設などの緊急性が少ない職場です。また、院内研修や勉強会が少なく、夜勤のない勤務形態も多いため、時間外労働が発生しにくくなります。

残業が少ない科目・部署

残業が少ない科目には、透析科や精神科があげられます。透析は予約制で時間が決められているため、精神科は手術がなく医療的な処置も少ないため、どちらも時間外労働は発生しにくい科目といえます。

また、デイサービスも、利用者様が決められた時間に来所するため、残業は少なめです。時間が決まっているため業務内容の計画が立てやすく、夜勤の勤務形態もないからです。

残業が少ない職場で働くメリット

残業が少ない職場で働くメリットは、勤務時間以降は自由に自分の予定を進められることです。子どものお迎えや自分の習い事など、残業によって予定を左右されないのは大きなメリットです。
また、残業が多い職場と比べて勤務時間が短くなるため、精神的・肉体的な負担も少なく、ストレスがたまりにくい環境です。

6.まとめ

日本医療労働組合連合会の調査では、始業時間前・終業時間後のどちらも日勤看護師の半数以上が30分を超える残業をしています。特に規模の大きい病院や緊急性のある科目において、残業が発生しやすい傾向があります。

看護師の残業が多い原因としては、勤務形態や突発的な対応、時間外の院内研修や勉強会などがあげられます。ですが、働き方改革の流れを受けて、これまで残業が多かった病院で、新しい勤務形態の導入や業務内容の改善、緊急時にもカバーし合えるような環境づくりといった、残業を減らすための取り組みが、導入されつつあります。

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