これまでの歩み
-新人時代は小児医療に携わっていたそうですね。
はい。国立病院系列の附属看護学校に通っていて、母体の病院では重症心身障害児医療に取り組んでいたことから、実習を通じて小児医療に興味を持ちました。卒後は小児専門の病院に就職し、1年目は循環器病棟に勤務していました。
私は昔からおっとりした性格なので、周囲が目を離せない新人で、先輩方から温かい指導をたくさん受けた思い出があります。私の新人時代は約40年前ですから、「仕事は見て覚える」という時代で厳しい先輩も多かったですが、皆さん厳しさの中に愛があり、それを新人なりに感じ取っていました。
今振り返っても、新人時代に受けた指導はどれも思い出深く、何年か経った後もふとした瞬間に「あの時の教えってすごく大事だったんだなぁ」と、実感することがよくあります。
-印象に残っている患者様とのエピソードはありますか?
看護師1年目に出会った、心臓の病を抱える男の子のことはずっと心に残っています。その子は入退院を繰り返していたので、病院の一日の流れや看護師の対応をよく観察していて、まだ5歳だというのに周りの空気を読み、医療従事者に気を遣う子でした。とても頭の良い子で、病棟が慌ただしい雰囲気の時や、看護師が忙しそうに動き回っている時などは決して話しかけてこないんです。
その子は入院中に水分摂取を制限していて、お水ではなく氷をあげていたのですが、ある日、とても喉が渇いた様子で、「看護婦さん、あとで氷を1つください」と声をかけてくれました。きっとすぐに欲しかったはずなのに、私の仕事を気遣ってわがままを言わない姿に、胸がキュッと締め付けられて申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
その一件以来、どんなに忙しい状況でも、看護師は話しかけにくい印象を与えてはいけないと深く反省し、患者様の前での立ち居振る舞いを見直すようになりました。相手に我慢をさせず、心の内を伝えやすい看護師、管理者で居続けることが私の永遠の課題です。
-看護師人生の中で、転機となったことはありますか?
大きな転機は、看護学生への実習指導者講習会に参加し、人材育成の重要性を知ったことです。看護学生はもちろん、後輩を育成していく上でも大切な学びを得ることができて、「人を育てること」がますます好きになった講習会でした。そして、指導とは誰もが簡単にできるものではなく、指導者としての心構えや学習者の特長を知った上で教育とは何かを学んでいく必要があることにも気付かされました。
管理者として25年以上人材育成に携わる中で、ケアの質を高めることも、患者様の笑顔をつくることも、スタッフの可能性を開花させることも、すべて教育から始まると実感しています。ですから、縁あって当院の看護部長として赴任した今、真っ先に取り組みたいのは、看護部の教育をより充実させることなんです。