医療従事者の働き方改革の一つとして「看護補助者の活用」が推進されるようになり、看護師との関係づくりをどのように進めるべきか、多くの病院が課題にしています。戸田中央メディカルケアグループ(TMG)の「牧野リハビリテーション病院」では、看護補助者を「介護スタッフ」と呼び、介護の専門職として看護師と協働しやすい環境を整えることで、ケアの質や働きやすさを高めているとのこと。さっそく見学に行って、その実態を調査してきます。
- 形 態
- リハビリテーション病院
- 所在地
- 神奈川県横浜市緑区/鴨居駅
- 病床数
- 120床(回復期リハ60床、障害者施設等一般60床)
玄関
「牧野リハビリテーション病院」へのアクセスは、JR横浜線「鴨居駅」南口から徒歩10分。病院までの道のりには、急性期病棟を持つ「牧野記念病院」、在宅部門を担う「牧野記念病院訪問看護ステーション」、法人合同の保育室「牧野保育センター」などがあり、地域に根差した法人であることが伺えます。玄関で迎えてくれたのは、回復期リハビリテーション病棟に勤務する新卒入職1年目の看護師さん。今日はよろしくお願いします。
リハビリテーション室
まずは、明るく開放的なリハビリテーション室へ。さまざまなリハビリ設備が揃っていますね。「ええ、こちらの充実したリハビリ環境を活用し、回復期リハビリテーション病棟では常時約90%の在宅復帰率を維持しています。リハビリテーション室は『地域の運動場』をイメージして設計されていて、リハビリテーション室から待合室へ続く廊下には、患者様に合わせて距離を決めて歩行訓練ができるトラックがあるんです」。
障害者病棟
障害者病棟で牛丸看護部長にお会いしました。「私は当院の開設準備から携わっていて、現場の意見が反映されるよう取り組んできました。内装は、入院期間の長い当院の患者様に四季の移ろいを感じていただけるデザインになっています。看護・介護動線に配慮した間取りや、使いやすい物品の選定、病室の照明の位置にまでこだわったんですよ」。院内はゆったりとしたスペースが確保されていて、患者様にも職員にも快適な環境です。
スタッフステーション
こちらの病院では、看護師と介護スタッフの協働を推進しているそうですね。「ええ、開設当初から両者が対等な立場で意見を言い合い、協力し合える職場を目指し、介護スタッフの専門職化を進めています。OJTでは、このように成長の道筋を示した教育支援パスを活用し、未経験から介護のプロへ成長できる環境を整えているんです」と、看護部長。介護に関する研修や、看護師と介護スタッフが一緒に学ぶ場も多いとのこと。
障害者病棟
つづいて、無資格・未経験で入職した介護スタッフさんを紹介していただきました。「幼い子どもを預けられる保育室があることに魅かれて他業種から転職しました。介護の仕事は奥が深くてどんどん魅力にはまっていき、実務者研修を修了し、介護福祉士の国家試験を受験予定です。業務貢献につながる外部研修は勤務扱いになり、資格取得費用の援助もあるので、子育て中も無理なくキャリアアップに励めます」と、介護スタッフさん。
回復期リハビリテーション病棟
お次は、回復期リハビリテーション病棟へ。医師・看護師・介護スタッフ・作業療法士・栄養士・薬剤師など、多職種が集まってカンファレンスを行っています。「看護師と介護スタッフだけが協働しているのではなく、全職種がチームアプローチを意識して協働しています。定期的なカンファレンスでは、患者様一人ひとりの意向や障害の状態に沿った最善の医療・リハビリを提供するため、職種を超えた意見交換を活発に行っています」。
バックヤードのカンファレンスルーム
「バックヤードにはカンファレンスルームがあり、委員会・研修・eラーニングなど、多目的な用途に使用しています」と、紹介してくれました。eラーニングは職場で受講できるんですか?「ええ、個人のスマホから好きな時間に学ぶこともできますし、看護部の研修としてeラーニングを活用することもあります。当院では、学びも業務の一環と考え、研修はすべて勤務時間内に開催しているんです」。
バックヤードの職員用休憩室
カンファレンスルームの隣には、職員用休憩室もありました。「休憩室は病棟内にもありますが、ここなら職場を離れてゆったりくつろげます。当院では、人員配置基準の約2倍の介護スタッフを採用しているので、休憩もしっかり取ることができますし、残業は役職者も含めて月平均3時間と少なく、一般職の残業時間はほぼゼロに近いです」。ONとOFFのメリハリを大切にできるんですね。
3F浴室
3F浴室には、ミスト浴が導入されています。「障害者病棟の患者様はほとんどの方が寝たきりで心肺機能が低い方が多いので、その負担になりにくいミスト浴を採用しています。看護師は患者様の安心・安全のために医療処置などの本来の看護業務を優先しますが、入浴介助や排泄介助にも積極的に携わっています」。
法人合同保育室「牧野保育センター」
つづいて、牧野記念病院の近くにある法人合同保育室「牧野保育センター」へ。「一般的な病院の保育室は、院内の一室で少人数制のところが多いですが、こちらは定員75名と大規模で、地域の民間保育園と変わらない雰囲気です。パート職員も含めて全職種が利用OKなので、どの部署にも小さなお子さんを持つママさんが活躍しています」と、看護師さん。
病棟
最後は、多職種の皆さんが集合してくれました。「当院の介護スタッフは約半数が介護福祉士の資格を有しています。今後は、看護師もより高い専門性を身に付けていけるように、TMGのキャリア支援制度を活用していく予定です。回復期・慢性期ならではの認定看護師の育成も目指しています」と、看護師の皆さん。向上心の高い仲間が集まってますね。今日はありがとうございました。
帰り道
――お疲れさまでした。看護師と介護スタッフが協働しやすい環境を整えている病院、いかがでしたか?
- 看護部の管理職の皆さんが「看護師と介護スタッフの良好な関係づくりを進めていこう」と団結し、お互いをプロとして認め合える職場づくりを進めていました。介護スタッフは無資格・未経験の方も大歓迎していて、看護師と同等レベルの教育サポートを用意し、働きながら介護福祉士資格を取得できるように応援しているんだとか。
――働きやすさはどうですか?
- とても働きやすい環境です。患者様は急性期の治療を終え、比較的容態が安定している方が中心なので、計画通りに業務が進んで残業はほとんど発生していないとのこと。ワークライフバランスを重視しているので、結婚・出産後も定着するスタッフが多く、看護部は半数以上が育児経験者です。
――では、ここはちょっと、というところは?
- 「オムツ交換は介護職の仕事」と考える看護師さんには向いていない職場だと思います。もちろん、勤務中は看護師しかできない業務を優先しているそうですが、状況に応じて看護師も排泄介助や入浴介助に携わるそうです。
――最後に、ここだけの話をひとつお願いします。
- 最寄り駅の「鴨居駅」から徒歩7分の場所に、「ららぽーと横浜」があり、お買い物にとても便利なんだとか。さまざまなショップが充実していて、映画館もあるため、仕事帰りの楽しみが広がるそうですよ。
看護師と介護スタッフの関係性が良い職場で働きたい方
結婚・出産後も安心して働き続けられる環境を求めている方