2025年07月28日

激務で不規則な生活というイメージがあって看護師を目指すことを躊躇する方はいらっしゃいます。激務で退職する方、激務だった記憶があるから復職をあきらめる方もいらっしゃいます。しかし、2019年の働き方改革関連法の施行をきっかけに、医療現場でも労働環境の改善が大幅に進んでいます。この記事では看護師の働き方改革の現状と転職先の見極め方を徹底解説します。
―― 背景:社会問題として深刻化する看護師不足
―― 目的:働き続けられる職場環境づくりを目指して
―― 要点:働き方改革関連法による6つの柱
―― ―― ①時間外労働の罰則付き上限規制の導入
―― ―― ②年次有給休暇5日以上の取得義務化
―― ―― ③ 客観的な労働時間の把握の義務化
―― ―― ④同一労働同一賃金の導入
―― ―― ⑤勤務間インターバル制度促進(努力義務)
―― ―― ⑥36(サブロク)協定の遵守
2.看護師の働き方改革で期待できる改善点とは?
―― 夜勤や時間外労働の減少
―― 年次有給休暇とワークライフバランスの確保
―― 業務負担の効率化と軽減
―― ハラスメント撲滅!健康的で安全な職場へ
―― 公正な待遇&キャリア支援
3.働き方改革に準拠している職場の見つけ方
―― 看護師求人の応募要項チェックポイント一覧表
―― 面接時に確認したいチェックリスト
4.今日から私も働き方改革!医療21で看護師の求人探し
5.まとめ:看護師の働き方改革で働きやすい職場選びをあきらめない
看護師の働き方改革とは?押さえておきたい基礎知識
激務や人員不足、長時間労働による過労死などが社会問題となり、2019年に働き方改革関連法が施行されました。それ以降、医療業界においても職場改善が推進されています。
安心して、長く働くためには、働き方に関するルールを知っておくことが必須です。まずはなぜ今改革が必要なのか?そしてどのような法律・制度が導入されているのかを見ていきましょう。
背景:社会問題として深刻化する看護師不足
看護師不足は今や社会の重要課題となっています。厚生労働省の推計によれば、2025年時点では全国で6万人〜27万人もの看護師が不足するとされています。
出典:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
とりわけ高齢化が進む中で、訪問看護など在宅医療分野の需要が急増しており、有効求人倍率が3.0倍(=1人の求職者に対して3件以上の求人がある状態)を超えるような都道府県も多数あります。都市部・首都圏では慢性的な人材難が続き、今後「団塊ジュニア世代」が高齢化を迎える2040年には、さらに人員不足が加速することが懸念されています。
看護師不足は医療現場の負担増やサービス低下に直結し、質の高い医療や患者の安全確保を維持する上で大きなリスクとなっているのです。
目的:働き続けられる職場環境づくりを目指して
実は日本の看護師一人当たりが担当する患者数は非常に多いです。日本の一般病棟では最大で「看護師1人が7人の患者を担当する」という基準がありますが、これはアメリカやオーストラリアなど先進国と比較しても一人あたりの負担が大きく、業務量の多さや精神的ストレスが離職率の高さにつながっています。
出典:いずれも厚生労働省「コメディカル不足に関して~看護師の人数と教育~」
また、日本看護協会の最新調査(2024年)によると、正規雇用看護職員の離職率は11.3%で、特に20代前半の若手層、結婚や出産・介護をきっかけに離職した層の“復職しにくさ”が問題となってきました。
このため、“誰もが長く安心して働き続けられる職場環境”をつくるための「働き方改革」が求められるようになりました。
要点:働き方改革関連法による6つの柱
働き方改革関連法には、看護師を含む全労働者にかかわる6つの大きなルールが盛り込まれています。医療機関はこの法制度に則り、勤務体制や待遇を見直す必要があります。以下で6つのルールの詳細を見ていきましょう。
①時間外労働の罰則付き上限規制の導入
労働基準法36条(通称36協定)の改正により、雇用者は以下を厳守しなければなりません。
- 月45時間・年360時間が法定残業の原則上限
- 特別な場合でも年720時間以内、単月100時間未満、複数月平均80時間以内
仮にこれを違反したら6か月以下の懲役または30万円以下の罰金というペナルティが課されるおそれがあります。看護師の職場では2交代16時間夜勤+日勤+サービス残業…というような過酷な勤務が常態化していましたが、現在は明確な法的上限が設けられ、職場の体質改善が進んでいます。
②年次有給休暇5日以上の取得義務化
労働基準法第39条の改正で、「年10日以上の有給休暇が付与される労働者に関しては、毎年5日は時季を指定して取得させる」ことが義務付けられました。
未取得の場合、事業者が指導対象となります。「忙しいから休めない」「有休を申請しにくい」といった心理的ハードルの低減が期待できます。
③ 客観的な労働時間の把握の義務化
これまでタイムカードがない職場、自己申告のみで勤務管理をしていた職場も多くありましたが、働き方改革関連法により「客観的記録による労働時間管理」が法的義務化されました。タイムカードやPCログなど客観的データの活用が必須となり、不適切な「隠れ残業」や「サービス残業」が排除されます。管理体制が不十分な場合は30万円以下の罰金が課せられるおそれがあります。
④同一労働同一賃金の導入
パートタイム・有期雇用労働法第8条に基づき、以下のような待遇整備が求められます。
- 正社員・パート・契約社員等の雇用形態にかかわらず、職務内容が同一であれば同等の待遇
- 基本給・賞与・手当・福利厚生等の不合理な格差禁止
- 労働者からの説明請求権・行政ADR(裁判外紛争解決)制度の導入
これにより、非正規雇用者であっても公正な給与・手当・福利厚生が得られるようになりました。病院によっては、さらに夜勤手当や資格手当の明細公開・昇給基準の明確化が進んでいます。
⑤勤務間インターバル制度促進(努力義務)
「労働時間等設定改善法」第2条第1項では、労働者の健康確保のため終業から次の始業まで一定時間の休息(インターバル)確保を事業主の努力義務とし、厚生労働省は11時間(最低でも9時間)を推奨しています。
特に夜勤・シフト制が多い看護業界では「深夜勤務→早朝勤務」などの連勤が健康を損なう大きな原因となっており、勤務間インターバルの推進は夜勤明けの連続勤務防止につながると期待されています。
⑥36(サブロク)協定の遵守
36協定の締結・届出がない状態での法定外の残業は一切不可となります。また、法定上限を超える残業や休日労働が常態化していた場合、事業主には行政指導・刑事罰が課せられるおそれがあります。
最近では、協定内容の明示や代表者選出の公正化も求められるようになり、透明性の高い残業管理が進んでいます。
看護師の働き方改革で期待できる改善点とは?
制度が整っても実際に現場が変わらなければ意味がありません。すでに多くの医療現場では離職率低下・夜勤負担の軽減・復職者増加などの一定の成果が現れています。
出典:公益社団法人 日本看護協会 広報部『「2024 年 病院看護実態調査」 結果 新卒看護職員の離職率は2 年ぶりに 10%台から 8%台へ改善 約 4 割の病院で多様な働き方を導入』
ここからは、どのような改善が期待できるのか、具体例も交えて解説します。
夜勤や時間外労働の減少
時間外労働の罰則付き上限規制や勤務間インターバルの義務化によって、以下のような改善が進んでいます。
- 2交代16時間夜勤→3交代8時間夜勤へシフト
- 遅出・早出など多様なシフト導入で夜勤回数・拘束時間の削減
- 夜勤の回数・連続勤務の上限も病院ごとに設定・可視化
こうした取り組みは、看護師一人ひとりの負担分散だけでなく、医療ミスや事故のリスク低減・患者サービスの質向上にもつながっています。
最近では「夜勤専門」「日勤常勤」など希望に沿った働き方も選択しやすくなりました。
出典:いずれも厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
年次有給休暇とワークライフバランスの確保
有休5日取得義務化により、以下のような改善が進んでいます。
- 看護師の有給取得率は約67.7%(全国平均)
- シフト調整や取得時期の計画付与で“休めない職場”は減少
- 産前産後・育児休業・介護休暇などとの組み合わせでライフイベントにも柔軟に対応
子育て中の時短勤務、介護との両立、ブランク明けの復職など、個々の状況に合わせた柔軟な働き方が普及し始めています。また、復職支援プログラムを導入する病院も増加中です。
業務負担の効率化と軽減
「医療DX(デジタルトランスフォーメーション)」の推進によって、以下の職場改善が可能となっています。
- 電子カルテ・業務用スマートデバイス・AIの導入で記録・事務作業の時間短縮
- 看護補助者や事務スタッフへのタスクシフトで雑務・搬送・清掃など“非看護業務”を削減
- チーム医療・地域連携の強化で役割分担が明確化
業務改善の一例として、「電子カルテ音声入力の導入により1日あたり30分以上の時短を実現」「看護補助者との分業で残業時間を1/3削減」といった成果が報告されています。
ハラスメント撲滅!健康的で安全な職場へ
2019年施行の労働施策総合推進法で「パワハラ・セクハラ・マタハラ防止」が法的義務化されました。
- ハラスメント防止規定の整備
- 専用相談窓口の設置
- 被害者や相談者への不利益取扱い禁止
- 研修・啓発活動の義務化
- 企業が違反した場合は指導・勧告・社名公表の行政措置
- 内部告発を妨害する行為は「30万円以下の罰金」対象
上記のような規制によって、ハラスメントの防止につながります。また、カスタマーハラスメント(患者・家族等による暴言や暴力)についても、現場の安全を守るための相談体制・支援策が広がっています。
公正な待遇&キャリア支援
同一労働同一賃金の施行により、事業者には以下の対応が求められます。
- 正規・非正規・パート間の給与や手当・福利厚生の格差解消
- 経験年数・職能・専門性に応じた昇給基準や資格手当の明確化
- 専門看護師・認定看護師へのインセンティブ支給拡大
- 管理職・リーダー看護師への評価・昇進制度の透明化
さらに、外部研修・eラーニング・資格取得支援などの、キャリアアップと待遇改善が連動する仕組みづくりも広がっています。
働き方改革に準拠している職場の見つけ方
制度の内容がわかっても、実際の転職活動では「その職場が本当に働き方改革を実行しているか」が最も大切です。ここからは、求人情報の読み解き方と、面接時に確認したいポイントを解説します。
看護師求人の応募要項チェックポイント一覧表
2024年4月の法改正で求人票に「労働条件の明示ルール」が強化され、業務内容・勤務地・就業時間・賃金・休日休暇・福利厚生の記載が必須となりました。これらの記載が欠けているのは論外ですが、不明点が多い、待遇や制度の説明が曖昧になっている求人にも十分注意しましょう。
項目 | 法的根拠・主な関連法 | チェックポイント(準拠確認内容) |
---|---|---|
応募条件 (有資格者、新卒OK、ブランクOK等) | 男女雇用機会均等法、同一労働同一賃金 | 年齢・性別・雇用形態等で不合理な差別がないか、有資格者や新卒・ブランク問わず公正な機会が与えられているか。 |
給与 | 同一労働同一賃金規定 | 職務内容や責任が同じ場合に雇用形態や属性(新卒・中途・ブランク明け等)で給与差が不合理になっていないか。 |
給与詳細(手当等) | 同一労働同一賃金規定 | 基本給・各種手当(夜勤、資格手当等)の支給基準が開示され、不合理な待遇差がないか明示されているか。 |
試用期間 | 労働基準法、同一労働同一賃金 | 試用期間中も著しく不利益な賃金・労働条件になっていないか、試用期間の長さや内容が合理的であるか。 |
勤務時間 | 改正労働基準法(36協定・上限規制・客観的把握義務) | 1日・1週の所定労働時間、時間外・深夜・休日勤務の取扱いが法定上限(36協定)を遵守しているか。出退勤管理が客観的な方法で運用されているか。 |
休日休暇 | 改正労働基準法(有休5日取得義務等) | 週休・年休など法定休日が確保されているか。年10日以上付与される職員には有給5日以上の取得を義務付けているか、取得しやすい職場であるか。 |
待遇・福利厚生 | 労働基準法、パートタイム・有期雇用労働法 | 雇用保険、社会保険、各種手当・制度が正規・非正規等問わず適正に提供されているか。福利厚生に有期契約・パート等での格差が不合理でないか。 |
研修制度 | 同一労働同一賃金、能力開発支援指針 | キャリア開発や研修制度が雇用形態・属性問わず利用でき、公平性・透明性が保たれているか。キャリア支援措置が明文化されているか。 |
奨学金制度 | 公正な募集慣行、雇用契約法 | 奨学金返済支援や条件が労働条件・契約で明示されているか。不利益変更がないか、利用制約等に合理性・透明性があるか。 |
面接時に確認したいチェックリスト
応募時、職場説明時、面接時に以下の項目を求人票や担当者からの説明で確認しておきましょう。また、応募先の“本音”は面接時のやり取りでこそ見抜けます。
労働時間・残業の管理体制
- 勤務時間の管理はタイムカードやシステム等、客観的な方法で行われているか
- 所定労働時間や残業時間の上限(36協定)が法定基準内で設定されているか
- サービス残業が発生しない仕組みや対策が明示されているか
休日・休暇の取得体制
- 有給休暇の取得を推進しており、年5日以上の取得義務が守られているか
- 希望休や連休の取得に柔軟に対応しているか
- 同一労働同一賃金と待遇の公平性
- 正規・非正規・パートなどで不合理な待遇差がないか
- 昇給・賞与・各種手当(夜勤・資格等)の対象や水準が明示されているか
業務分担・タスクシフト
- 看護師の本来業務以外に多すぎる雑務や過剰な負担がないように業務分担が工夫されているか
勤務間インターバルや夜勤体制
- 終業から次の始業まで*十分な休息時間(インターバル)*が確保されているか
- 夜勤回数や連続勤務に上限・配慮を設けているか
ハラスメント防止・相談体制
- ハラスメント防止規程や相談窓口が設けられているか
キャリア・研修支援
- 教育体制・研修制度は正職員だけでなくパート等も利用できるか
- 資格取得やキャリア支援制度の有無
労働条件の明示と相談対応
- 就業規則や労働条件(給与詳細・休日・福利厚生等)が明示され、事前に確認・相談できる環境があるか
不明点を質問することで、働き方改革への取り組み状況やブラック体質の有無を判断しましょう。「有給はどのくらい消化されていますか?」「残業の管理はどのようにされていますか?」など具体的な質問で実態を確認するのがポイントです。
今日から私も働き方改革!医療21で看護師の求人探し
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また、「先輩インタビュー」「現場動画」「職場レポート/Webで病院見学」など、実際に働く人の声やリアルな雰囲気をチェックできるのも強みです。きっとご自身に合った職場が見つかるはずです。
まとめ:看護師の働き方改革で働きやすい職場選びをあきらめない
働き方改革関連法の浸透で、看護師の転職環境は大きく改善されています。残業が多い、有休が取れない、待遇格差がある……といった“過去の悪習”は今や通用しません。
今回ご紹介した最新の法律や制度、チェックポイントを押さえて、ご自身の価値観やライフスタイルに合った職場を見つけましょう。

医療21コラム記事監修者
株式会社アドバン
人材採用サポート・Web事業・印刷物制作を中心とする事業を展開する株式会社アドバンを1991年に設立。人材採用サポートの中でも、医療・介護業界に特化する専門求人サイト『医療21』『介護21』を運営。リアルな求人情報を届け、人材紹介ではない”ベストマッチングの場”を提供している。